農家が事業承継に使える補助金|農業参入に必見の制度

全国で後継者のいない会社・組織は65.1%に上っていると言われています。農業界はさらに深刻で、「2020年農林業センサス」においては、5年以内の後継者を確保していない経営体は71.1%と他の産業よりもかなり高い数字となっています。

高齢化は待ったなし、後継者問題に対して課題は山積みの農業界ですが、昔から親族間での事業承継は脈々と行われてきました。

古くから農業は家業ととらえられ、親から代々、子供へと継承されていくことが前提と言われていました。農業の事業承継は95.4%が親族間での事業承継となっています。

農業M&Aというと「スマート農業」や「アグリテック」のようにトラディショナル×先端で洗練されたワードの組み合わせに聞こえるかもしれません。しかし実際はM&Aの手法を除いた方法での事業承継は昔から当たり前のように行われてきました。

農業界としては当たり前のように行われてきた親族間の事業承継。それを横展開した「M&Aによる事業承継」が当たり前の感覚になれば、農業界における後継者問題は一気に解決に繋がりそうです。

今回はそんな感覚を後押しすべく「事業承継・引継ぎ補助金」について紹介します。

地域の未来のため、自分が今まで積み上げてきた資産を無駄にしないため、子どもや後継者の将来のため…事業承継する理由はさまざまあるかと思います。事業承継しなかったことに対する、将来の損失は計り知れません。儲かっているのに看板を下げざるを得ない状況はすごくもったいないです。

是非とも「事業承継・引継ぎ補助金」を利用して事業承継に対する心理的・金銭的ハードルを下げ、将来に事業を繋げましょう!

事業承継・引継ぎ補助金のベース|経営円滑化法とは

事業承継・引継ぎ補助金の説明に行く前に、この補助金ができた背景についておさらいしていきます。

農業における業界としての二大課題は、

  • 食料自給率が低い
  • 農家の高齢化が著しい

が挙げられます。

一方で、日本全体の中小企業の抱える課題としては

  • 後継者不足で黒字倒産やむなし
  • 子ども世代が後を継ぎたがらない

といったところが挙げられます。

このような背景の中でできた法律が「経営円滑化法(正式名称「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」)」です。

読んで字のごとく、事業承継を円滑に行うための支援に関する法律です。中小企業の事業承継支援を目的とした金融支援や納税の猶予、税負担の軽減を前提とした認定や金融支援や遺留分に関する民法の特例などが含まれています。

この法律に基づき代表的な2つの制度が出来ました。

1つ目は、「事業承継税制」です。事業承継税制は、後継者が贈与税・相続税について、一定の要件のもとに、その納税を猶予される税制。また、後継者が贈与や相続、遺贈により取得した株式等の贈与税又は相続税の100%猶予も適用されます

2つ目が、「事業承継・引継ぎ補助金」です。補助金なので「お金をあげます、融資します。」ではなく「使用したお金の○%補助(国がキャッシュバック)します。」といった趣旨になります。

事業承継・引継ぎ補助金の概要

「事業承継・引継ぎ補助金」というのは、後継者がいない等の理由により今後の事業継続が困難になることが見込まれている農家を含む中小企業が対象となっています。

この補助金は、以下の2種類から構成されています。

  • 事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)
  • 事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)

令和4年度ではさらに、

  • 廃業・再チャレンジ

が追加される予定となっています。

「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」では承継後の投資設備や販路開拓に関する費用、「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」では事業承継時での弁護士・会計士・税理士といった士業の専門家活用に関する費用が補助対象です。

さらに「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」は、

  • Ⅰ型 経営者交代型
  • Ⅱ型 M&A型

の2種類があり、

「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」には、

  • 買い手支援型
  • 売り手支援型

の2種類があります。

事業承継・引継ぎ補助金の要件

【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)Ⅰ型 経営者交代型】

親族内承継等により経営資源を引き継いだ事業者への支援が対象となっています。

要件は以下の通りです。

  • 事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
  • 産業競争力強化法に基づく認定市町村または認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受けるもの等、一定の実績や知識等を有しているものであること。
  • 地域の雇用をはじめ、地域経済全般をけん引する事業等創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組むものであること。

【事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)Ⅱ型 M&A型】

主に従業員・第三者への事業承継でM&Aで経営資源を承継した事業者への支援が対象となっています。

  • 事業再編・事業統合等を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
  • 産業競争力強化法に基づく認定市区町村または認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。
  • 地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業等の事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者であること。

参照:事業承継・引継ぎ補助金ウェブサイト https://jsh.go.jp/r3/business-innovation/

現在何らかの実績のある企業や個人が対象であり、いわゆる「脱サラして農家になる!」といった親元就農ではない新規就農者は、この補助金は認められにくくなっています。

農業経営を行って行く上で、ある程度の経験と実績を有する人材で、経営を革新的に飛躍させる“可能性”があることが条件となっています。地域の雇用や、地域経済全般を牽引する事業等創業を元に、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者ということも条件に入っています。

Ⅰ型とⅡ型の要件の差は親族間事業承継かM&Aによる事業承継かになります。また、令和3年度において補助額の上限がⅠ型では250万円に対し、Ⅱ型では500万円となっています。(令和2年度ではⅠ型400万円、Ⅱ型800万円)

ご自身の事業承継の型に応じて適切な類型を選択しましょう。

また、対象となる経費は事業費と廃業費の2種類あります。

事業費が主に人件費や設備費、原材料費、外注費、委託費など。

廃業費は廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費などです。

【事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)Ⅰ型 買い手支援型】

事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業者等が対象。要件は以下の通りです。

  • 事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
  • 事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。

【事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)Ⅱ型 売り手支援型】

事業再編・事業統合等に伴い自社が有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業者等が対象。

要件は、

  • 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。

どちらも補助上限額は250万円以内で、売り手支援型のみ廃業費の上乗せ額(上限200万円)があります。

M&A支援機関登録制度とは?

「事業承継・引継ぎ補助金」において、2021年8月に開始された「M&A支援機関登録制度」と連動することが発表されました。

FA・M&A仲介費用の補助対象も「M&A支援機関登録制度」に登録された仲介会社を介した際のみ、仲介費用が補助対象経費となるなど制度に大きな変化をもたらしています。

農業は親族間のみで引き継いでいくものという考えから脱却し、農業競争力強化支援法により、事業の再編や事業参入に対する支援が行われていることを踏まえ企業に対しても広く門戸を開いていく方針になります。

背景としては、2015年の農業経営体数は約138万で、そのうち家族で農家を経営している家族経営体が134万と農業経営体の大部分を占めておいましたが、家族経営体は2010年から2015年の5年間で約30万減少しているのに対し、組織経営体は年々増加傾向にあります。

今後も、M&Aにおける農業承継が増えていくことを踏まえて、事業承継・引継ぎ補助金にも新しい風が吹いているのですね。

▼農家の事業承継・M&Aに関する記事はこちらもご覧ください。

事業承継・引き継ぎ補助金の採択率は?

「事業承継・引継ぎ補助金」の採択率は2021年6月11日~2021年7月12日の1次公募では、申請数412件に対して採択件数346件の採択率は83.9%。

2次公募(公募期間が2021年7月13日~2021年8月13日)においては、申請数419件に対して採択件数330件と、採択率は78.7%となっています。

1次、2次公募合わせて採択率が80%越えと、とても高い水準です。そのため、事業承継を控える経営者にとってはとても魅力的な補助金ですね。

まとめ

先祖代々受け継がれてきた農地は事業承継の積み重ねによって今日まで繋げられてきました。農業と事業承継は元々は関係が深いものです。

M&Aの売り手側の農家は代々受け継がれてきた農地であることがほとんどです。そのため、農業に新規参入したい企業と、農地を売りたい農家では、片方が事業承継の経験があるということが多いです。

売り手と買い手の双方が初めての事業承継となると、どちらもおぼつかなく、本当に納得のいくディールが行われるまでのステップはとても多く感じるかもしれません。つまり、農業界の事業承継って他産業に比べて実はハードルが低いのでは?ということです。

M&Aと聞くと急にハードルは高く感じるかもしれませんが、上記の通り、農業界では元々は当然のように行われてきたものです。それに加え採択率がとても高い「事業承継・引継ぎ補助金」というものも存在します。

農業界にM&Aで新規事業を考えている方はぜひこの制度を利用したいですね。

また、他にも農業には他産業ではなかなか無いような好条件の融資制度や補助金・給付金がたくさんあります。

国の方針や金融機関の制度を知っているか知らないかは大違いです。知っているだけでかなり有利にビジネスが進められるということは間違いありません。

農業へ参入を考えている方、有利な条件で企業に売却したい農家の方や農業法人の方、まずはお気軽にご相談ください。

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