農業の事業承継 よくあるトラブル5選

「代表がAさんからBさんに交代します。」

文面だけ見ればたったこれだけなのですが、その裏にはとんでもない苦労があるのが事業承継です。

この記事では、農業でよくある事業承継のトラブルを5つピックアップし紹介します。

根本的な問題となるのは以下の3つです。

  • 人に関する問題
  • お金に関する問題
  • 相続資産に関する問題

どの問題に対しても共通して言えることは事前対策をしっかりしておくことです。

  • 事業承継をすると、従業員はこう思う。
  • 事業承継をすると、資産を引き継ぐ関係でこんなことが必要。
  • 事業承継をすると、新社長はこんなメンタル。

など、あらかじめ予見できることはたくさんあります。

予見できるパターンとその対処法、起こりうる問題を予習することでスムーズに事業承継ができるでしょう。

事業承継に手間取ってしまい、本業に支障があっては本末転倒です。

そうならないために、農業の事業承継にはどのような問題が起こりうるのか、また、どうやって解決していくのか知っておきましょう。

①農業資産分割のトラブル

家族経営の農業事業を引き継ぐにあたり、大きな問題となるものの一つが農業資産の分割です。

これは最低限相続人に保証される権利である、民法の「遺留分」からくる問題です。

例えば夫が亡くなったとしたら、配偶者は相続される財産の二分の一が遺留分として最低限保証されます。(配偶者がいない場合や子が複数いる場合など、想定されるケースは多岐に渡るため割愛します。)

相続財産がお金のみの場合はわかりやすく分割されますが、農地や農業用設備等の資産を相続する場合、分割が複雑になります。

農地を均等に相続した場合、相続人Aさんは農地の二分の一を、相続人Bさんは二分の一を相続するというケースが考えられます。

この場合、もともと一つの農地だったものを、相続によって2人の管理者に分けられることになります。

ハウスを建てる、新たに果樹を植える、など農業を行う上では農地の権利者に許可を取らなければいけないことは少なくありません。

相続人同士が仲の良い関係だったら良いのですが、連絡するのも億劫な不仲な関係だと、その農地の農業活動が途端に滞ってしまいます。

また、1代限りの相続問題ならまだよいですが、2代3代となし崩し的に続いてしまうと、もともとあった一つの農地の権利者が4人、8人と増えてしまい役所や農業委員会でも手を付けられないという土地は少なくありません。

対処法としては当然のことですが、生前に兄弟や親戚との間でよく話しあう必要があります。

土地、建物などの資産をどのように相続するのか、お金や株式などはどう相続するのか、家族みんなで納得する形をあらかじめ決めておくことはとても大切です。

農家を継ぐ方にとっては農地の相続はとても価値のあることですが、農業に関係のない相続人にとっては価値のないものと思われがちです。

そこで相続に対する不公平感を感じ、金銭でバランスをとるといった形もあります。

相続人Aが農地の全部、相続人Bが金銭を相続、資産価値の差額分はAからBに現金で支払うというように。

この解決策は相続人Aの支出が高額になることも考えられますので、被相続人(亡くなった方)が元気なうちに穏便に話を進めておきたいところです。

②農家の後継者が主体となって事業ができていない

後継者が無事に見つかったとしても、後継者が主体になっておらず、農業事業がうまくいっていないことがあります。

例えば親が経営していた農業事業を引継ぎ、子が引継いだ場合のことです。

名目上、子が組織のトップになったとはいえ、親が隣で黙って見ているというのはなかなか難しいものです。

親は良かれと思ってあれこれと指示をして、子はその指示に従う。子が何か決断に迫られることがあったら一度親に相談してから決める。

代表とは名ばかりで実質的な決定権はまだ親のまま、ということがあります。

口を出したい気持ちはとてもよくわかるのですが、一度後継者に指名したのなら、親は黙っているべきです。

そうしなければ子はいつまでも親の判断を仰ぎ、農業経営が自分事にはなりにくいでしょう。

親は事業を承継した時点で、「もう自分の時代ではない」と自覚し、子は「自分がやらなければ」と覚悟を決める。

助けを求めているのに突き放すべきであるというわけではなく、必要最小限の援助をし、子を一人の経営者として認めてあげることが事業承継後の組織の発展につながります。

③社長交代による関係者の思いのすれ違い

農業法人など複数の従業員を抱える組織の場合、トップが変わることで軋轢が起きることがあります。

それぞれ持つ想いや方向性、未来が違い、揉めてしまうことは農業に限らず当然あるでしょう。

代表権がある人物が後継者を決め、弁護士や税理士などの関係機関の協力を得て、形式上の事業承継を進めることは可能です。

人間が関与する以上、利害関係による恨みや嫉妬、妬み嫉みは常に付きまとう問題です。

家族経営+アルファの組織体でも、トップが変わることによる問題はあります。

親から子へ経営トップが変わると全てが先代踏襲とはいかないでしょう。

後継者としては

「給料を増やしたい」

「もっと働きやすい環境づくりをしたい」

と身を粉にして動いたとしても、従業員からは

「前の方が働きやすかった」

「急にやり方が変わって仕事量が増えた」

などと思われたりすることもあります。

家族経営でも法人経営でもそこで働いてくれる方への感謝は大前提として、コミュニケーションを取り合い、全体にとっての最適解や合意形成をとる場を設けることはとても重要です。とはいえ、とても頭を悩ます問題ですよね。

最悪の場合はスタッフ全員離れていくので注意が必要です。

根回しという言葉をネガティブに取られる方もいるかと思いますが、世代交代や組織形態が変わる前の時点からの根回し、つまりあらかじめコミュニケーションをとっておくことは非常に大事です。

事業承継にかかる費用の問題

「社長に任命された!やった~!」

と喜んでいる場合にはリスクがあります。

事業承継とは、単なる社長の交代ではありません。

先代の持つ土地、機械、設備などの資産も引き継ぐことになります。

引き継ぐということは、そこには税金がかかります。

相続税、贈与税、不動産取得税、消費税、登録免許等々。

譲渡の形によりかかる税金の種類は変わってきますが、資産を引き継ぐにあたって何かしらの税金がかかってきます。

このことを理解していなかったためにトラブルに発展するケースはとてもよくあるようです。

また、事業承継にはお金がかかるだけではなく、時間もかかります。

引き継ぐ資産全ての名義変更や、関係各所へのあいさつなどはとても時間がかかる作業です。

時間がかかるものは極力外注化し、自ら煩雑な手続きをやらないと初めから決めることも手段の一つです。

事業承継にかかるお金に関しては、「事業承継税制」に代表される事業承継を促す税制優遇制度があるので、税金の勉強だけではなく、制度の知識も忘れてはいけません。

「事業承継しました。そのため、お金が無くなりました。」では本末転倒です。

事業承継後、できるだけお金を残し新しい組織体制でスムーズに経営に着手できるよう心構えや事前の知識を準備しておきましょう。

⑤そもそも後継者が見つからない

事業承継以前に、そもそも後継者が見つからない方、多いのではないでしょうか。

農業に限らず、すべての産業で後継者が不足しているという問題はここ数年続いています。

「子どもが地方で働くことに否定的」

「子どもと不仲」

「子どもには能力的に任せられない」

など、いろいろな課題があるかと思います。

参考記事

あなたの農地を誰に継承するのか?|承継先の選択肢

こちらの記事にもありますが、後継者は子に限ったことではありません。

親戚でも、従業員でも、M&Aによる第三者でもいいのです。

後継者がいないと嘆く前に、後継者の選択肢とそれぞれのメリット・デメリット、実現可能性を順番に整理しておくことをお勧めします。

後継者不足で困っているのはあなただけではありません。社会全体の問題なのです。

いろんな企業、いろんな自治体があらゆる取り組みを行い、後継者不足解消への一役を担っています。

それらの情報をキャッチして、しっかりと準備し、後継者不足から脱却しましょう。

まとめ

農家の事業承継の場面でよく起こるトラブルを紹介しました。

このうち、人の問題や準備・メンタルの問題は時間をかけてご自身で向き合ってもらうしかないです。

事前にどのような問題が起こりうるのかを知り、備えることはとても大事です。

事業承継は決して焦って行わないでください。焦って事業承継を行うと準備不足により丸く収まるものもおさまらなくなってしまいます。

また、税制の問題や資金面の問題は専門家と相談しながら解決することをお勧めします。

今現在にどのような税制優遇の制度があるのか、どのような事業承継に使える資金調達の方法があるのか、タイムリーな情報をキャッチするには専門家と二人三脚で取り組むことが欠かせません。

事業承継についての下準備に何が必要かのライトな相談から、実際に事業承継をしていてつまずいた個別具体な相談まで、事業承継の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

▼参考記事

【実例インタビュー】第三者承継に失敗してしまった長野県の鈴木さん(仮名)| 第三者承継の落とし穴 !失敗を防ぐために重要なこと。

離農・新規就農をお手伝いします!

 

・儲かると聞いて農業を始めたが、うまくいかない
・子供に農業を継がせたいが、地元に戻ってきてくれない
・離農したいが、地域の目が気になる

など、農業を手放そうと考えている方

・どうすれば農家になれるか分からない
・農家になりたいが、地方に頼れる人がいない
・親元の農業を継ぐことになったが、不安だ

などなど新規就農でのお困りごとを抱えている方
AgriTouchにぜひご相談ください!

関連記事