【親子承継インタビュー】父から引き継いだ大切な理念と、時代に合わせた仕組みづくりについて。


◉インタビューにご協力いただいた方

小林農園 代表

小林宏敏(こばやしひろとし)さん

自己紹介

2015年に父親から事業承継を受け、静岡県東部地域(三島市)にてミニトマトの生産・収穫を行なっている。現在のハウスでは6種類(6品目)のトマトをつくり、「カラフルトマト」の名前で地元静岡を中心に多くの皆さんに愛されている。その他、箱根山麓三島野菜を日本一輝くブランド野菜にするために、若手農家を中心に平成27年に「箱根山麓のうみんず(※)」を設立。おいしい野菜をつくるだけでなく、マルシェへの出店や食育・セミナーへの参加など、農家みずからが消費者の元へ出向き、野菜の魅力を伝える活動を精力的に行なっている。

※箱根山麓のうみんずとは

平成27年度、JA三島函南と小林さんら若手農家(平均年齢30代前半)により設立。これまでは農作物をつくることが主な仕事だったが、のうみんずでは商品のコンセプトからPR計画など、現状の市場流通に留まらない新しい発想を大切にしている。直近では飲食店とのコラボレーションやイベント計画など行い、商品のプロデュースまで携わっている。


<記事まとめ>小林さんが考える「親子事業承継」のポイント

・若いうち(承継前)から経営の数字に触れ、自分ゴト化する

・父親のポリシーである「おいしいトマトをつくり続ける」を大切に

・経営者として「自分がやるべきこと」を明確にする


Q.事業承継されたのはいつ頃だったのでしょうか?

まずはじめに、私の経歴を少しだけお話すると、高校・大学は農業を専攻し、「いつかは実家を引き継ぐんだろう」という気持ちで学んできました。その後、大学を卒業し、おおよそ2年近く実家での農業実務経験を積んだあとに父親が64歳の時に事業を継ぎました。

他の農家さんで事業承継された方のお話を聞くと、引き継ぐのは年齢的にちょっと早いと思われるかもしれないのですが、私自身はできるだけ早く家業を継ぎたいと考えていました。

Q.なぜ早く継ぎたいと思っていたのでしょうか?

学生時代に、「自分の農家・農園について調べてみよう」という機会があり、実家経営のよりリアルな状況を知ることができました。そこで目にしたのは、私が想像していた以上に厳しい現実でした。真面目にひたむきに、おいしい野菜をつくったはずなのにもかかわらず、厳しい経営状況がそこにはありました。

そこで、農業の知識・情報を身につけるだけでなく、できるだけ早い段階で自分が責任を背負って、経営者のスキルを身につけたいと思うようになりました。若いうちにできるだけ多くチャレンジして、経験と実力をつけていくことの必要性を肌で感じたのかもしれません。

Q.若いうちに承継する意向について、お父さんはどう感じられていたのでしょうか?

ありがたいことに父親からも「早く責任をもった方がいい」と賛同してもらいました。ただ当時の年齢は20代半ばだったため、一緒に農園で働いている人は年上ばかりでした。私よりも年齢も経験も上のため、言いづらいところもありましたが、いい意味での若さを活かし、「チャレンジしている」「若さゆえの失敗」として許してくれたように思います。

Q.経営者になって「大変だな」と感じたのはどんなところですか?

事務仕事が予想以上に多いことに驚きました。体感ですが、農業が7割で、事務仕事が3割ほどあります。事務仕事とは注文の確認、イベントや交流会の出店・参加、従業員の給与計算、各種固定費の引き落としなどが中心です。ただ農作物をつくるだけではなく、経営するために考えることに加え、売るための準備やPRまで手がける必要があることを知りました。

“どうしてこんなに仕事が多いんだ!”という憤りよりも、“両親はこんなに膨大な仕事をしていたのか”という驚きと敬意を強く感じました。ただ欲を言えば、事業承継前にどんな準備が必要なのか、親子間でどんな会話をしておけばよりスムーズなのかを、第三者で相談できる相手がいるとより良かったと思います。

Q.思った以上に農業以外の仕事が多かったんですね。どのように克服したのですか?

現在も父母に手伝ってもらっている部分はあるのですが、「自分でやらなければならない仕事」と「作業効率を高めて省人化・効率化する仕事」と「従業員に任せる仕事」を分けるようにしました。まず、農作業については省人化・効率化(=IOT化)を進め、できるだけ自動化を目指しました。

トマトはハウスでの生産するため、1つのハウスで植えられる本数はある程度決まっています。そのため、どれだけ収量を高められるか?が決め手となります。現在もMC(統合環境制御装置)、肥料管理・水管理など、人の手をなるべく介さない方法を交えながらIOT化を進めています。

Q.小林さんが「経営者としてやらなければならない仕事」とは具体的にどんなものなのでしょうか?

私の父親のポリシーは「おいしいトマトをつくり続ける」こと。そのポリシーは経営する上で最も大切にしています。しかし今の農業は「つくる」だけではなく、“どのようにして売っていくか”まで農家自身が考えることが必要となってきたと考えています。

昨今、ミニトマトの生産量が全国的に増加してきていることや、資材が高騰していることで、これまでと環境が変わってきています。そのため、私たち農家が表に出向き、農作物をPRすることも経営者の役割ではないかと思います。現在はマルシェイベントに参加して買ってくださるお客様と直接会話をしたり、EC(通販)サイトの立ち上げ準備を行ったりしています。

Q.小林さんが事業を継ぐ上で気をつけたポイントはありますか?

事業承継したから自分の好きなことができる、ということではないと思っています。長らく事業を支えてきてもらった両親が大切にしている想いを継続しながら、自分なりの強みを付け足していくようなイメージです。

トマトの味は少し落ちるものの、品種を変えることでハウス内の収量を増やすことは可能だと思います。その結果、売上も伸ばすことはできるかもしれません。でも、それでは父親が大切にしている「おいしいトマトをつくり続ける」というポリシーに反することになってしまいます。そのため、これからも品種にこだわりながら省人化・効率化を進め、ポリシーを守っていきたいと思っています。

世代間のギャップで、私のような「承継される側」が父親へ対して“省人化・効率化の理解が得られない”というような声を聞くことがあります。私自身、結果的には「収量を増やし、実績を出して理解を得ていく」ほかないと感じています。願望や意志だけではなく、結果を出して理解してもらう、という歩み寄り方も必要になってくるのかもしれません。

Q.最後に、小林さんが今後実現していきたいことを教えてください!

自分の農園でミニトマトをその場で収穫して食べられたり、お土産のとしてその場で持ち帰りできるような観光農業を進めていきたいです。静岡のミニトマトをもっと身近に感じてもらえるような取り組みはこれからも考えていきたいと思います。

事業承継の目線では、第三者と相談できる仕組みが浸透すると承継が活性化されると思うので農業の未来のためにもできるだけスムーズな承継ができるよう、私ができることであればアドバイスや講演なども行っていきたいです。経営者になると裁量権も広がりますが、その分責任も大きくなります。もし事業承継を考えている方がいらっしゃれば、できるだけ早いうちに経営に関する数字を知ることで、より早い段階から経営目線を持てるかもしれません。

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